ファブリス・ブレジエ
エアバス
社長兼CEO
世界の航空機製造をリードするエアバスを率いる。現在、とりわけ好調なのが、燃費や環境性能に優れる「A320」シリーズなどの小型機だ。3月にはインドネシアの格安航空会社(LCC)ライオン航空から、エアバス過去最大となる234機の受注を獲得した。7月には、2013年の全体の受注目標を800機超から、1000機超に引き上げている。
航空・防衛業界での経験が長い。ミサイル大手のMBDAや、ヘリコプター大手のユーロコプターの最高経営責任者(CEO)を経て、06年にエアバスの最高執行責任者(COO)に就任。12年にCEOに就任した後も、積極的な業容拡大策は続く。
米アラバマ州にエアバス初の組み立て工場の建設を決めたほか、ボーイングの牙城だった日本市場でも、主要航空会社と受注に向けた最終的な交渉を急いでいる。
LCCの成長や新興国での旅客・貨物需要の拡大を背景に、航空機の引き合いは根強い。エアバスは受注獲得に向けて、アジアなどでの陣容を増強。6月には、中型機「A350」の初飛行を成功させた。好調な小型機に加え、中型機でもシェアを拡大していく考えだ。
親会社EADSは7月、売上高の7割を稼ぐエアバスの名前をとり「エアバス・グループ」に社名変更する方針を打ち出した。欧州の巨大な航空・防衛企業をエアバスが担っている証しでもある。
引き続き民間航空機部門の指揮を執るが、社内外で現EADSのエンダースCEOの有力な後継者候補という声も多い。日本と欧州連合(EU)のビジネス界の対話の枠組みである「日EUビジネスラウンドテーブル」のEU側共同議長を務める。52歳。
(2013年9月17日/日本経済新聞 朝刊より)
略歴
1961年7月、フランスのディジョン生まれ。
ファブリス・ブレジエは2012年6月1日、エアバスの最高経営責任者(CEO)に任命された。
1983年、仏クレイマルビル原子力発電所にテストエンジニアとして入社。1984年にはペシネー社(日本)でセールス・マネージャーを務める。1986年に産業・研究・環境地方局(DRIRE)に入り、1989年には仏農業省で経済・財政問題担当ディレクターに任命された。
フランスの大臣付き顧問を数年務めたあと、1993年にマトラ・ディフェンスに入り、アパッシュMAWとユーロドローンで要職につく。1996年には、誘導兵器部門(後にマトラ・BAe・ダイナミクスとなる)のディレクターに任命された。
1998年にはマトラ・BAe・ダイナミクスのCEOとなる。その後、欧州の大手ミサイル企業であるMBDAのCEOに就任(MBDAは、アエロスパシアル・マトラ、ブリティッシュ・エアロスペース、イタリアのフィンメカニカによって2001年に設立された)。2003 年以降はユーロコプター社の社長兼CEO、2005年6月からEADSのユーロコプター部門のトップを歴任した。
2006年10月、エアバスの最高執行責任者(COO)に任命。エアバスの出資企業であるEADSの取締役メンバーにも任命されており、グループ全体の業績向上にも携わった。また、エアバスの幅広い経営改革計画である「パワー8」プログラムの指揮を執り、取締役会業務、エンジニアリング及び調達、そしてA350プログラムを統括した。
1980年フランスの理工科学校(Ecole Polytechnique)、そして国立高等鉱業学校(Ecole des Mines)を卒業。