古森 重隆
富士フイルムホールディングス
会長兼CEO
写真フィルム事業に陰りが見え始めた2000年、社長に就任した。液晶関連材料や化粧品、医療など新規事業を積極的に展開することで、業績のV字回復を達成した。「変わることを恐れてはいけない」と社員を鼓舞しながら、「第2の創業期」をつくろうとしている。
液晶関連材料でテレビの映りを良くするのに欠かせないTACフィルムの世界シェアは8割を超える。映画用フィルムなどの部材の一部にすぎなかったが、成長市場をいち早く見極めて収益源に育成した。タッチパネル事業も力をつけてきている。
カメラや写真フィルムで培った技術は医療分野にも応用する。光学レンズなど画像関連技術は診断装置に、医薬品事業には写真フィルムで蓄積した化学合成技術が生かされている。08年には富山化学工業を買収するなど積極的な事業拡大策を打ち出し、13年3月期の関連部門の売上高は3300億円を超えた。
1939年、満州(現中国東北部)の奉天(現瀋陽)生まれ。5歳のときに終戦を迎え長崎に引き揚げた。東大文科一類に入り、3年への進級時に経済学部を選択。「戦争に負けた原因は経済力。経済で国力を伸ばすためにメーカーに行きたい」と富士写真フイルム(当時)を選んだ。
営業経験が長く、欧米メーカーとの激しい競争では先頭に立って指揮を執った。96年にドイツに赴任した際、米イーストマン・コダックに水をあけられていた写真フィルム事業の立て直しに着手。新製品の開発と販路拡大策が奏功し、欧州で十数あったコダックとのシェア差を逆転した。
今でもビジネスにかける情熱は衰えを知らない。NHKの経営委員長など社外の要職も歴任し、存在感は増し続けている。74歳。
(2013年9月17日/日本経済新聞 朝刊より)
略歴
昭和14年9月5日、長崎県生まれ。
昭和38年3月 | 東京大学経済学部卒 |
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昭和38年4月 | 富士写真フイルム株式会社 入社 |
昭和60年7月 | 大阪支社販売第二部 部長 |
昭和61年7月 | 磁気材料事業本部 営業部長 |
平成2年4月 | 営業第二本部 印刷システム部長 |
平成7年1月 | 取締役 営業第二本部長 |
平成8年6月 | 取締役 Fuji Photo Film (Europe) GmbH社長 |
平成11年11月 | 常務取締役 Fuji Photo Film (Europe) GmbH社長 |
平成12年3月 | 常務取締役 経営企画室長 兼 国内外関係会社管掌 |
平成12年6月 | 代表取締役社長 |
平成15年6月 | 代表取締役社長 CEO |
平成18年10月 | 富士フイルムホールディングス株式会社 代表取締役社長 CEO 富士フイルム株式会社 代表取締役社長 CEO |
平成24年6月 | 富士フイルムホールディングス株式会社 代表取締役会長 CEO 富士フイルム株式会社 代表取締役会長 CEO |
社外役職:
株式会社ダイセル 取締役
日本ベンチャーキャピタル株式会社 取締役
写真感光材料工業会 会長
公益財団法人日独協会 会長
日蘭協会 会長
元 日本放送協会 経営委員長
関係会社役職:
富士ゼロックス株式会社 取締役
富山化学工業株式会社 取締役会長