リム・チョクペン
IHHヘルスケア
社長
マレーシアの政府系投資会社カザナ・ナショナル傘下、IHHヘルスケアのトップとして事業拡大を加速している。三井物産の出資を受け入れたほか、トルコでも大手病院チェーンの買収に成功。最先端医療ときめ細かいサービスが売りで、シンガポールの拠点病院には世界の富裕層が訪れる。治療目的の患者を受け入れる「医療ツーリズム」でも世界の先頭を走る。
自身が内科、心臓病治療の専門医。後にIHHに買収されるシンガポールの病院で医師としての経験を積み、経営者としても活躍した。今でも現役の医師として診療にあたる。現場で培った知恵を経営に生かし、患者向けサービスの充実に力を入れる。世界を代表する病院経営者の一人といえるだろう。
厳しい競争を勝ち抜くため、チョクペン氏が掲げる戦略は徹底している。その一つが入院受け入れ体制の拡充だ。病室は高級ホテル並みの設備を整え、一流シェフが患者の要望に応える。もちろん医療の質向上にも力を入れており、地域の優れた医師を囲い込み、最先端の医療機器を積極的に購入する。
もう一つが、飽くなき規模の拡大。傘下の病院網を広げることで、医療機器や医薬品の調達コスト引き下げを狙っている。次に狙っているのは中国市場の本格開拓だ。
医療産業を成長戦略の柱に掲げる日本にとって、ダイナミックな経営スタイルから学べる点は数多くある。66歳。
(2013年9月17日/日本経済新聞 朝刊より)
略歴
1946年11月8日生まれ。
心臓病専門医と病院経営の二つの分野で豊富な経験を持つ。1987年、シンガポールの病院グループ「パークウェイ」にコンサルタントとして入社。2000年、パークウェイ社長、2010年から副会長。中国、マレーシア、インド、中東への進出を主導し、主要な市場における同社の業容拡大に中心的な役割を果たす。2011年、パークウェイを傘下に置くIHHヘルスケアの社長に就任。
シンガポール、マレーシア、香港、中国、インド、トルコで民間企業の社外取締役を務め、シンガポール議会の保健委員会委員を務めた経歴も持つ。2011年8月から2012年6月まで米ジョージ・ワシントン大学で「医療サービス経営とリーダーシップ」をテーマに教鞭を執った。1972年、シンガポール国立大学卒(医学学士)。1976年、同校で内科学修士。